痛みやしびれはなぜ出るのか

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痛みには二つの種類がある

頭痛、頚痛、肩痛、腰痛、手や足、目、耳など、身体に生ずる痛みは、さまざまな感覚のなかでもっとも強く、知らず知らず生活の全体をおおいつくしてしまいます。痛みを取り除くことは、積極性や冷静さ、充実感など、さまざまな気持ちの幅を取り戻す大切なステップです。まず痛みの性質をよく知って、しっかりと克服の道筋を描きましょう。

火傷をすると、まず接触面に激しい痛みが生じます。これを水などで冷やしてやると痛みが和らぎますが、しばらくすると患部を中心に”ジンジン”と疼くような痛みが広がってきます。

最初に接触面に生じる痛みは、皮膚の知覚神経によるものですが、遅れてあらわれる疼くような放散痛は自律神経性の知覚繊維によるものです。

火傷にかぎらず、場所が特定できないような疼きやだるさ、重さの感覚があるときは、体内の自律神経が緊張していると理解していただいてよいでしょう。

わたしたちの体内の生理活動は、意識の及ばないところでおこなわれています。血液の循環、体液の成分の調整、老廃物の除去、左右の目の運動調節、関節にかかる圧力バランスの調節などなど、自律神経は、さまざまな内臓の働きや血管、汗腺などを調整して、体内のバランスを自律的にコントロールして健康な身体を維持してくれているのです。

【症例02】介護の仕事で長時間にわたって中腰の姿勢を強いられている。腰が痛く、身体の歩くにも怖さを感じるときがある。節々がこわばり、首もよく回らないため、自動車の運転にも支障を感じる。夜眠れないので、疲労感がぬけず精神的にも圧迫感を感じている。

日常生活で感ずる痛みの多くは、身体を動かしたときに生ずる関節痛です。「筋肉の痛み」が意識されることが多いのですが、実際には骨膜靭帯関節内部に多くの神経が分布しており、このすべての神経が原因になります。また筋肉にも表層筋深層筋の役割の違いがあります。多くの痛みは、このような複合的な要因が絡み合って発生しています。

このよう身体症状の発生の背景に地球重力であることをよく意識しておきましょう。

身体の重みのイメージ

たとえば、わたしの体重=66kgは、水を一杯につめたポリタンク3つに牛乳パック6つに相当します。体重40kgの人でも、たえず水を一杯につめたポリタンク2つ分の重みを持ち歩いていることになります。

長期間、国際宇宙ステーションに滞在した宇宙飛行士の方々が、自力で立てないほど足腰が弱ってしまうのはご存知ですか? わたしたちは、日ごろこれだけの重みに耐えながら、階段を上り下りしたり、立つ歩く身をかがめるなどの身体動作をおこなっているのです。この重みは、ちょっと扱いを間違えば骨折や肉離れを起こすのに十分エネルギーをもたらすことはいうまでもありません。

疲れているとき、「外に出かけるのがおっくう」になったり、「電車を一本遅らせてゆこう」、「ちょっと横になりたい」と無意識に考えます。これは、身体の重みから心身を解放されたいという自然な欲求なのです。

わたしたちの身体を形作っているのは、無数の細胞です。疲労が回復するのも、健康な日々をすごせるのもを、すべては細胞の活動のおかげです。細胞の大きさは20ミクロンに達しません。この小さな細胞の立場に立ってみると、身体の重みがどれほど大きなものであるかじっくり考えてみてください。

たとえば褥そう(じょくそう)という現象があります。寝たきりの方の背中やお尻の皮膚が身体の重みで圧迫され、血液の循環や神経伝達をさまたげられることによって潰瘍を起こす現象です。

身体の重みを理解しよう

わたしたちは、日ごろ想像以上に高度な関節機能に支えられて日常動作をおこなっています(詳しくは腰痛を生みだす生体力学をご覧ください)。それゆえに、関節の機能は繊細でさまざまな故障を起こしやすいのです。この方のように、腰や肩、首などに痛みや運動制限があるときは、関節に分布する神経がかならず緊張状態になっています。

下の図は背骨の関節を上側から眺めたものです。わたしたちの背骨は、24個の小さな骨(椎骨)を連ねてくつられています。それぞれの椎骨の後方には、脳と全身の神経系の連絡路となる脊髄が収められていて、一つ一つの椎骨の後方から分岐した神経が、全身の器官や筋肉、関節に分布するようにできているのです。

背骨の関節と脊髄、神経根症の関係

このような椎骨神経の位置関係のため、わたしたちの身体は、首や肩口、腰のように、背骨が反った領域で痛みを発しやすいのです。背骨が反ることによって椎骨の後方の神経の通り道(椎間孔)で神経が圧迫されやすいためです。

痛みが発生するのは、反りすぎになって硬く固定された椎骨の下面の関節です。上半身の重みがすべてかかる腰部の関節では、ちょっとした関節の位置の異常がぎっくり腰のような激しい痛みを引き起こします。

この方の場合も、首から腰にいたる背骨の関節の制限を取り除き柔軟性のある状態に回復すると、一回目の施術で怖くてできなかった腰の前屈動作ができるようになり、車を運転しながら後方を振り向く動作が抵抗なくおこなえるようになりました。自律神経に配慮した気持ちのよい緩やかな刺激で、しっかりと関節機能を改善することが痛みを取り除く第一歩なのです。