熟睡するとはどういうこと?

健康の観点から眠りの意味と背景を考えましょう。よい眠りには、多くの効用があります。同時にそのために必要な備えや準備もあります。眠りをよく知れば眠ることが楽しくなります。また精神的な充足感、能力開発、余暇や美容のためにも大きな効果を引き出すことができるようになります。ここでは眠りを捉える基本的な視点について紹介します。


熟睡は実感するとはどういうこと?


熟睡したと実感できるには、いくつかの要素が必要です。

  • 十分な時間、目を覚ますことなく眠れること。
  • 起きた時、手足にこわばりがなく、頭がすっきりとしていること。
  • おなじく、起きた時にお腹が空いた、なにかたべたいなぁ~という気持ち(食欲)がわいてくること。
  • 夢を見て、気分転換していること。
  • 幸福感があること。

などです。

この一つ一つに意味と背景があります。その背景には、わたしたちの生き物としての生理があります。当院では、そういった幅広い視野から眠りを評価し、「よりよい眠り」のための施術を提供しています。

まず眠りの基本を理解しましょう。


自己修復のための睡眠


そもそも大腸菌のような単純な生き物にも眠りがあります。細胞には活動期と休眠期があるのです。いいかえると、生物は機械のように一定リズムで働き続けることはできないということなのです。

生き物は、バクテリアやカビのような小さなものでも、自分の手で自分の身体を作り自己修復能力を発揮して生きていかなければなりません。わたしたち人類にとっても、睡眠は自己を修復するためのプロセスだということを忘れはいけません。

生き物の活動期と休眠期は「異化・同化」と呼ばれることもあります。異化とは、さまざまな分子が分解されてそこから化学エネルギーを取り出すプロセスです。一方、同化は分子が合成されて、生命の身体や生理活性物質が作られていくプロセスです。生命は、この異化と同化、活動と休眠というサイクルを次第に進化させながら生きているのです。

睡眠周期02


より進化した睡眠


さらに睡眠には、多細胞生物としての睡眠、脊椎動物としての睡眠、哺乳類としての睡眠、霊長類としての睡眠といったように進化を遂げてきました。基本的な機能を残しながら、新たな役割を付け加えてなりたっているのが、わたしたち人類の睡眠なのです。

生き物の自己修復とは細胞分裂のことです。このため睡眠は太陽からの紫外線などによって遺伝子が損傷される危険が少ない夜の時間帯が選ばれてきました。

さんごの受精もモリアオガエルの交尾もウミガメの産卵もみんな夜おこなわれます。

人間の場合、細胞分裂が一番活発なのは受精卵のころです。子供のころも、身体が大きくなるために細胞分裂が活発におこなわれます。

大人の身体で細胞分裂をおこなうのは、上皮性組織と呼ばれる体表部や腸、肺などの表面(食べ物や大気と接する領域)の細胞、血管の内皮細胞などに限られます。このなかでとくに細胞分裂が活発なのは腸管の上皮性組織です。

腸の様子02a


腸の上皮性組織の細胞分裂


腸管の上皮性組織は消化液による損傷で激しく傷つけられます。腸内細菌も活動しているので免疫的な役割もとても重要な領域です。正常な機能を保つために睡眠時の細胞分裂が不可欠な場所なのです。

ただし寝ている間中、細胞分裂を続いているわけではなりません。まず睡眠の初期段階では、細胞が免疫系の細胞の働きかけで損傷した細胞がアポトーシス(細胞死)を起こして排除されてゆきます。その間、腸はぐるぐると音を立てて活発に活動します。

睡眠中は血圧・心拍が低下し、体内の血流はすくなくなっていますが、腸自らが動くことで、必要な血流量を確保しているのです。

そして起床前、成長ホルモンの分泌される時間をきっかけに一気に細胞分裂が起こります。このようなプロセスがうまく働くと、起床時には空腹感があって、食べると自然なお通じがあります。これは睡眠の質を測る第一のサインです。

このようなサイクルは体内時計の厳格な管理のもとにコントロールされています。よい睡眠とは、体内時計をリセットして、体内の多数の細胞や器官の働きの連携を高める意味も持っています。

 


こんなに大切な睡眠の効用


細胞分裂のための睡眠には、体温調節機能を低下させて脳神経を休息させる意味もあります。この機能は、哺乳類のように常に体温を一定に保つ生物において重要な意味を持ちます。脳の神経にはさまざまな身体器官を監督して目的にそってコントロールしやすい状態に置くという機能があります。

哺乳類の身体では、体温を一定に保つために、たえず血液の温度を監視し、必要とあれば筋肉に働きかけて即座に熱を作り出すようにコントロールしているのです。

睡眠は、体温調節をはじめとする脳の監督の機能を停止させます。その結果、体温は緩やかに低下していきます。体温の低下が一定のレベルに達すると脳は再起動して体温の上昇のために活動をはじめます。眠りが浅くなり、夢を見る時間です。

寒さなどで体温の低下が急激だとこの時間サイクルが短くなり、脳は十分に休息できなくなります。痛みや尿意なども、睡眠の継続を妨げる要素になります。

脳の中枢機能が低下したときに目や顎、表情筋、手足の筋肉は、意識のコントロールを離れて不随意に運動をはじめます。この不随意な目や顎、表情筋などの動きは、目や顎関節、表情をコントロールする筋肉の緊張を取り除き、栄養状態を改善して機能回復をはかる役割があります。

日中での疲労が過度になると、このような不随意運動があまり激しくなりすぎて睡眠の妨げとなることがあります。

おなじく脳の中枢機能が低下したときに生ずる夢には、脳内の円滑な情報処理をうながし、日常の問題解決のために脳内の神経結合を再構成する学習効果があります。

このような眠りの意味を考えてみると、日頃、わたしたちは覚醒した時の身の処し方に対して、「よりよい眠りを得る」ためにもっと注意を払ってもよいのではないかと気づかされます。


眠りの質の低下がもたらすさまざまな弊害


かつての自然と密着した伝統的な暮らしのなかでは、眠りを乱すものは不安や心の動揺以外にはあまりありませんでしたが、現代の生活は起きて活動する時間を多くとろうとするあまり、眠りのための自然な身体のリズムを無視したものになっています。

このことによって、目や耳、表情筋や顎などの機能が低下したいり、食生活を支える腸の機能が犠牲になったり、脳の休息が不十分なために朝起きも十分な満足が得られない毎日を余儀なくされています。

眠り01

脳の学習能力の低下は、能率の低下、意欲の低下、楽しみの低下につながりますし。腸の機能の低下は肌荒れや皮膚の血行の低下やアレルギー反応など、美容のうえでも大きなマイナスになります。これに対し、多くの情報に囲まれて、なにを取捨選択するかで無限の豊かさが広がっている現代に、睡眠の価値が見過ごされて、多くの人の健康と日々の活動力が犠牲されていることはとても残念なことです。

当院は、このような観点からとくに眠りとお通じの改善の関係と重要性のために、手技療法が生み出してきた理論と経験を提供する独特の整体院です。心、健康の維持増進、仕事、育児、美容、体力増進などの面で、ぜひあなたの人生をに役立てていただきたいと思っています。

よい睡眠がもたらす体内時計の同調

施術03わたしたちの体内はさまざまな器官の分業によってなりたっています。器官の働きをコントロールする時間が保たれなければ健康で活動的な生活をおこなうことはできません。このために睡眠がはたしている重要な役割について理解しましょう。


体内時間がもたらす健康な日常生活


朝起きても血圧が上がらない、立ちくらみがする、夜中にトイレに起きる、朝食欲がない、日中に眠けが取れない、朝起きた時点で目の疲労を感ずるなどの症状の背景には、体内時計の乱れが関係しています。

さまざまな器官の活動の時間的な同調が保たれていないことを示しているのです。下の図は体内のホルモンや内臓の活動のピークを示したものです。

体内時計01

わたしたちの体内では、さまざま器官が分業して細胞の生活を支えています。各器官は、それぞれタイムングをあわせて活動することで生理活動の恒常性(ホネオスタシー)を保っています。これが乱れると、身体の不調なって表れてきます。

このタイムスケジュールを正しくリセットすることは睡眠のもっとも重要な役割の一つです。このことをよく理解して睡眠の改善に取り組みましょう。

 


体内時計の同調が健康の基礎


  • 寝ると体温が下向しはじめ90分周期で体温上昇がおこる。
  • 睡眠中は尿を濾す能力が高まって尿量が大幅に減少する。
  • 横になると血圧が下がり呼吸が緩慢になる。立つと血圧が上がり呼吸が活発になる。
  • 明け方に成長ホルモンが分泌され内臓の上皮、血管の内皮で細胞分裂が起こる。
  • 起床前に血糖値が上昇し、脳が覚醒する。
  • 起床時には体温が高くなっている。

快適で活動的な日常生活にとって、体内時計の役割は不可欠なものです。生理活動の周期が崩れると、身体がだるく、疲労感がぬけず、横になりたい・眠りたいという気持ちにたえずさいなまれることになります。

睡眠と進化01

体内時計の中枢となるのが脳で、自律神経やホルモンを通じて、各所の体内時計の同調を保っています。しかし、現代の生活は、このような体内の時間サイクルを崩すさまざまな要因を抱えています。

全体的な生活のリズムに乱れはもちろんですが、局所の疲労の過度の蓄積やよい意味での疲労感の蓄積の不足、精神的な緊張なども、睡眠の質を低下させ、体内時計を乱す要因になります。


シンギュラリティという現象


強い光を浴びることが体内時計をリセットするうえで重要な役割をはたしていることが知られています。この現象を「シンギュラリティ」と呼んでいます。強い光の刺激が脳内の松果体という部位に作用して体内時計をリセットすると考えられています。

しかし、強い光を浴びることだけでは十分によい睡眠の質がもたらされるわけではありません。たとえば腰の痛みが膀胱の神経を緊張させて夜、トイレに起きるといったこともあります。猫背などの姿勢の問題は、就寝時に気道を圧迫して呼吸を不安定にしたり、いびきを大きくして睡眠の妨げになることがあります。

また日中強いストレスを受けると、脳が興奮してなかなか寝付けなかったり、それがために床に就いた後もしばしばトイレに起きたくなったり、起床前の血糖の上昇が見られず、起きてはみても脳は眠り込んだままで、身体は重く、意識は働かず、「眠れた」という実感とはほど遠い朝を迎えることになりかねません。


自律神経調整の意義


脊髄神経反射の調整は、このような神経の興奮が鎮静し、腰痛や肩こりといった運動器官の問題だけでなく、内臓にいたる神経の緊張、夜間の呼吸の不安定、眼球運動や歯ぎしりなどの不随意運動をも鎮静してくれます。

大切なことは、疲労が蓄積した場所、興奮状態にある神経を的確に整えることです。無駄な刺激によって身体に違和感や緊張を残すことは避けなければなりません。

身体が緩んでここちよい疲労感に包まれることは、体内時計をリセットするうえでも重要な意味を持っています。心地よい疲労感は睡眠の質を改善し、体内時計をリセットする大きな意味があります。これがシンギュラリティの本来の姿だからです。

現代の生活では身体を固定したまま、目や肩、首に大きな負担をかけることが多くなります。たくさんの情報にさらされ脳は興奮しながらも、全身を動かしてここちよい疲労を感ずる生活ではなくなっています。

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身体は偏った使い方によるこわばりや神経症状、精神的なストレスによって睡眠をさまたげられ、身体の生理的なリズムをくずことにより、いわゆる病気ではないけれども健康ではない状態に置かれてしまいがちです。


当院の施術


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当院の脊髄神経反射による施術は、身体のこわばりや姿勢のバランスを回復するだけでなく、自律神経に働きかけてさまざまな生理活動を改善するとともに、深い眠りをもたらし、体内時計のリセットによる健康な毎日を取り戻すためにとても有効なのです。

ぜひあなたの身体にあった脊髄神経反射の調整を受けて、ここちよい安らかな眠りを取り戻してください。

腰痛を生み出す生体力学

腰痛のもとになる身体力学

腰痛は多くの人を悩ませるもっとも大きな痛みの1つです。一度痛みが起こるとなかなか完治しないと思われている方も多いかもしれません。決してそんなことはありません。症状が発生する原因をよく理解して積極的に腰痛を克服できることを知っていただきたいと思います。

本田技研工業アシモ

本田技研工業が作り出したアシモは、人間の歩行動作の持つ特徴を取り入れることにより、従来のロボットにはない安定性と敏捷性を生み出しました。ヒトに近い二足歩行は、なんともいえない親しみを感じさせますね。しかし、そのアシモでさえ、歩行時に持つことのできる荷物の重さはわずか1kg(2011.02月現在のデータ)に過ぎません。

人間の身体は、アシモよりはるかに華奢な材料で出来ています。しかし、ずっと重い荷物を持って、すばやく運動することができます。じつは、なにげない日常動作でさえ力学的にはとてつのなく大きなエネルギーが発生しています。ここにアシモには真似のできなかった大きな壁があるのです。

跳躍のバイオメカニクス

たとえば体重60kgの人が10cmの高さから飛び降りると、体重計の目盛りは簡単に体重の10倍=600kgにまで跳ね上がります。ジョギングをすれば、踵には体重の2.5倍程度の衝撃がかかります。アシモがゆっくり活動しているのは、そのような巨大なエネルギーに耐えられないからなのです。

わたしたちは、このような大きな力のなかで、なぜ平気でいられるのでしょう?

その秘密は、人体の持つ高度な情報処理能力にあります。わたしたちの身体は、生きた細胞によって作られています。信号を伝える神経の太さはわずか1ミクロン、関節を動かす筋繊維にいたってはわずか数ミクロンです。もちろん、モーターも電源装置もそれをつなぐ配線やセンサーも必要ありません。

わたしたちの関節は、神経や筋肉のミクロのパワーでびっしりとガードされ、多方向から緻密に荷重バランスの調整をおこなうことができます。それゆれに、想像を超える大きなエネルギーを意識することもなく、すばやい動きを作り出すことが出来るのです。

腰椎のわずかな関節変位がぎっくり腰を引き起こす

おじぎのバイオメカニクス人間の身体は、じつはかなり巨大です。日常動作で生ずる重み衝撃は、ちょっとしたことで骨や筋肉を破壊するに十分すぎるほどなのです。

お辞儀の姿勢を例に考えてみましょう。上半身を前方に傾斜させたお辞儀の姿勢では、下部の腰椎を支点とするテコが働いています(右図参照)。上半身の重心を胴体の中央として、その重さを20kgと仮定すると、このとき、腰椎の後方に200kg近い力が生ずることがわかります。

これに対し、痛みを伝える神経の線維はわずか1ミクロンです。関節靭帯骨膜のなかには、高度な荷重バランス制御のため、この小さな神経の線維がびっしる張り巡らされているのです。

関節の故障によるわずかな荷重バランスの乱れが激しい痛みを引き起こさせるのは、当然といえば当然なのです。

痛みやしびれはなぜ出る?で紹介したように、わたしたちの身体の重みは、意識しているよりもずっと巨大です。お辞儀の姿勢は、いわば水をいっぱいにつめたポリタンク1~2個(20~40kg)を斜めにして身体の前で抱えようとするようなものです。このとき、指先や腰にどれほど大きな力が必要か想像してみてください。

この重み衝撃に耐えられるのは、生まれながらに備わった関節の高度な情報処置能力がしっかりしているからです。大切なことは、しっかりと関節機能を回復し、身体の重み衝撃を均等に分担しする高度な情報処理能力を回復することです。これこそ、数十億年にわたる生命の進化によってもたらされた人類特有のパワーなのですから。

脊柱の関節と神経

腰痛を克服するためには、まず最初に関節に生じている痛みを取り除きましょう。痛みのある関節は、かたよった位置に固定されています。押してみると動きに制限があります。

このような関節は、じっとしているときはなんともなくとも、立ったり歩いたり、ちょっとでも衝撃が加わるような場面では、かならず激しい痛みを引き起こします。

この痛みは、たんに筋肉が凝ったり疲労して生じる痛みではありません。身体の重みに関節の神経が悲鳴を上げている痛みです。深層筋の緊張を取り除いて痛みを鎮静すると同時に、わずかでも動きの制限が残らないように、多方向から関節の位置の調整をおこない、柔軟な関節の動きを回復しましょう。

身体の体勢や動作によって生ずる腰や膝、足首などの激しい痛みを改善するためには、関節運動の果たすべき役割、逸脱している関節の本来あるべき位置をよく知っていなければなりません。そして、生理的な範囲を超えてずれてしまった関節を安全かつ正確に適正な位置に復位させる技術が必要なのです。